「この資料をいい感じにまとめて」と頼んだら、きれいな文章は返ってきた。でも、会議で聞かれそうな点が抜けている。もう一度頼むと、今度は長すぎる。AIを使っていて、そんな遠回りをしたことはないでしょうか。
プロンプトという言葉は難しそうですが、ここでは「AIに渡す依頼文」と考えれば十分です。特別な呪文を覚えるより、誰が何に使うのか、何を材料にするのか、どんな形で返してほしいのかを伝えるところから始めましょう。
この記事では、仕事の依頼に使いやすい形を編集部の提案として紹介します。プロンプトを工夫しても、事実の正確さや、社内情報の安全な取り扱いが保証されるわけではありません。
この記事でわかること
- AIへの依頼に入れたい四つの情報
- 要約・メール・アイデア出しの改善例
- 回答がずれたときの直し方と、使い回せるテンプレート
長い依頼文より、目的が見える依頼文
OpenAIの公式資料は、指示、例、関連する背景情報などを整理して伝える方法を紹介しています。また、同じ指示でも生成結果が一定になるとは限らないと説明しています。OpenAIのプロンプト設計ガイド
この考え方を普段の仕事に置き換えると、依頼の情報を整理することが出発点になります。API向け資料にある設定や専門用語を、チャットの依頼文にすべて持ち込む必要はありません。
例えば、後輩に資料整理を頼むときも、「まとめて」だけでは、上司向けの報告なのか、自分の理解のためなのか伝わりません。AIへの依頼も、作業のゴールを先に共有すると、どこを直すべきか判断しやすくなります。
最初に伝えたい、四つの情報
次の四項目は、公式の必須形式ではなく、編集部が仕事用にまとめた依頼の型です。
目的:何のために使うか
「要約して」ではなく、「明日の会議で、上司が対応を判断するための要約を作って」と伝えます。読み手と用途を指定すると、必要な情報を考える基準ができます。
材料:何を根拠にするか
要約する文章、確認済みの事実、利用してよい参考資料を区別します。「以下の文章だけを根拠にする」「書かれていない情報を補わない」など、材料の範囲も示しましょう。もちろん、入力前に会社の利用ルールを確認することが前提です。
条件:何を残し、何を避けるか
期限、担当者、未決事項を残してほしいのか。専門用語を避けたいのか。守ってほしい条件を具体的にします。「分かりやすく」だけより、「専門用語を使う場合は一文で説明する」のほうが、後から確認しやすい依頼になります。
仕上がり:どんな形で返すか
三つの箇条書き、メール本文、見出し付きの説明など、使いたい形を指定します。文字数は目安として伝え、出力後に確認してください。指定した長さに必ず収まるとは限りません。
例1:資料の要約を、会議で使える形にする
以下は架空の業務を想定した依頼例です。実際のサービスで効果を測定した結果ではありません。
最初の依頼が「この資料を要約して」だけだと、何を優先すべきかが伝わりません。会議で使うなら、次のように用途を足します。
以下の資料を、明日の社内会議で使うために要約してください。読み手はこの案件を初めて知る上司です。結論、判断が必要な点、次の対応の順に、三つの見出しでまとめてください。期限と担当者は残し、資料にない情報は補わないでください。決まっていない点は「未決」としてください。
大事なのは、ただ短くするのではなく、「会議で何を判断するか」に合わせることです。返ってきた要約を原文と照らし合わせ、数字や未決事項が変わっていないか確認してから使います。
例2:メールを整えるときは、約束を増やさせない
メールの書き換えで困るのは、丁寧さを足した結果、元の文にはない約束まで入ることです。編集部としては、語調だけでなく、変えてはいけない意味も指定することをおすすめします。
以下のメールを、取引先向けの丁寧で簡潔な文章に整えてください。依頼内容と期限は変更しないでください。新しい約束、謝罪の理由、対応済みという説明は追加しないでください。元の文で意味が曖昧な部分は、本文とは別に確認事項として示してください。
「プロっぽくして」という指定より、何を変えないかが分かる形です。完成稿では、相手の名前、日付、添付資料、約束の内容を自分で確認します。AIに整えてもらったことと、送信してよいことは別の判断です。
例3:アイデア出しは、選ぶ基準も渡す
「SNSの案を10個出して」だけでは、実行できない大がかりな案が混ざるかもしれません。自分が選べる案にしたいなら、使える時間と対象読者を伝えます。
AIを仕事で使い始めた会社員向けに、短い解説投稿の案を五つ出してください。一人で作成でき、準備時間は30分以内を目安にします。各案に、読者の困りごと、伝える内容、事前に確認すべき事実を付けてください。実際の利用体験や成果は作らないでください。
ここで出る準備時間も、AIによる見積もりです。実際に作れるかは自分の作業条件に照らして判断します。「30分」と指定しただけで、所要時間が保証されるわけではありません。
回答がずれたら、全部書き直す前に一つ直す
依頼文を長くするほど、うまくいくとは限りません。まず、回答の何が困るかを短い言葉にします。
- 長すぎる:残す項目を指定し、その他は省くよう頼む。
- 抽象的すぎる:自分の業務場面を一つ示し、その場面の例を求める。
- 必要な情報が抜ける:必ず含める項目を列挙する。
- 事実と提案が混ざる:確認できた内容と、提案を分けて出すよう頼む。
例えば、「もっとよくして」ではなく、「この案のうち、準備に一時間以上かかりそうなものを外し、一人でできる案に置き換えて」と直します。よかった部分を残しながら、問題のある条件だけ変更する方法です。
何度も修正して依頼が混み合ってきたら、現在の目的と条件を整理し直しましょう。別の会話に移る場合は、必要な背景も渡し直します。履歴と入力の関係は、AIとの会話が長くなると、何が増える?で説明しています。
保存して使える、仕事用テンプレート
次のテンプレートは、毎回すべて埋める必要はありません。まずは目的と仕上がりだけでも具体的にしてみてください。
目的:[誰が、何のために使うか]
お願いしたい作業:[要約・書き換え・案出しなど]
材料:[入力してよい資料・確認済みの事実]
守ってほしい条件:[残す情報・変更しない内容・避ける表現]
仕上がり:[見出し・箇条書き・長さの目安]
材料にない事実は補わず、必要な情報が足りない場合は確認事項として示してください。
この型は「AIを間違わせない仕組み」ではありません。依頼の意図と、回答を確認する基準をそろえるための道具です。入力できる情報の範囲と、出力内容の確認は引き続き必要になります。
最初の一歩は、いつもの依頼に一行足すこと
次にAIへ「まとめて」と頼むときは、「誰が何を判断するために使うか」を一行足してみてください。それだけでも、回答が用途に合っているかを判断する基準がはっきりします。
プロンプトの基本は、難しい言葉を増やすことではなく、仕事の依頼を具体的にすることです。自分の用途に合った依頼文ができたら保存し、毎回変わる材料や条件だけ入れ替えて使ってみましょう。
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公式情報の確認日:2026年10月5日。本文の依頼例は編集部作成の説明用サンプルであり、実測結果や各社共通の公式推奨形式ではありません。
